Field Log #001|雨が止んでも、半日もぬかるむ場所がある

POROMAT Field Lab — Vientiane, Laos
記録日:2026年5月(ビエンチャン実地)/公開日:2026年7月8日
記録者:尾石 光 + Noynith Camith

この記事は PUBLIC LAB(無料公開) の第一号です。POROMATが現場で「何を見て、どう判断したか」を、そのまま記録します。結論ではなく、判断の過程を公開します。

1. SITE SCAN:敷地の現象をみる

急な雨が止み、雲が消え空は明るい。それなのに、この前庭の一区画だけ半日近く水が引かない。

ラオス・ビエンチャンの、ごく普通の住宅地。アスファルトもコンクリートもなく、土の前庭だ。「土なら水を吸うはず」――とそう思っていた。

そうではない。一度雨が降ると、雨水は土の表面を滑り、低い場所に集まり、抜けずに残る。家の際、中央の動線、公道に面した車回り。水が滞留する場所はいつも決まっている。

ここでは、家から公道へ抜ける中央の動線を見る。歩くたびにぬかるみ、雨後は通りづらい。生活の動線が、雨のたびに不便になる。

2. 目に見えない裏側

なぜ、土なのに吸わないのか。答えは地面のにある。表面を見ているだけでは、永遠に直らない。

この動線の滞水は、3つが重なって起きている。

① 表層が水を弾く。宅地が作られた過去から、水はけの悪い泥土で地面がならされ、さらに長年踏み固められた表層は、見た目より緻密。雨水は浸み込む前に表面を流れ、低い場所へ集まる。

② 下層が締め固まり、浸透しない。表層を仮に抜けても、その下で締め固まった層が水を止める。水は行き場を失い、地表に溢れ出る。

③ そして決定的に――流末がない。集まった水が「どこへ抜けるか」の出口が、この敷地には設計されていない。公道側には側溝があるが、前庭の水はそこへ接続されていない。出口のない水は、溜まるしかない。

多くの「水たまり対策」は①の表層だけをいじって失敗する。砂利を撒く、土を盛る。一時的にマシになり、次の雨で元に戻る。裏側(②と③)に触れていないからだ。

2.5 同じことが、宿泊施設などの日本でも起きている可能性がある

この「出口の問題」は、ラオスの住宅地だけのものではない。敷地のタイプが変わっても、水の挙動は同じ構造で起きる。

グランピング、ヴィラ、サウナ付き宿泊施設、屋外アクティビティ中心の体験型リゾートでも、雨後に価値が落ちる場所は、ほぼ決まっているはずである。

  • 駐車場から受付までの動線
  • 受付から客室までの小道
  • 客室からサウナ・焚き火・水場までの移動
  • ウッドデッキまわりの地際
  • テント・キャビン前の踏み固められた土
  • 1日に複数の屋外アクティビティを回す施設では、雨後の地面コンディションがアクティビティの中止判断・復旧作業・お子さま連れの安全管理にそのまま跳ね返る
  • 雨後にスタッフが毎回避けて案内する場所

利用者は「自然の中だから仕方ない」とは受け取らない。足元が悪い場所は、景観の問題ではなく、レビュー・安全性・滞在満足度・スタッフの運営負荷に直結する。

つまり、ぬかるみは単なる排水問題ではない。雨の日でも価値が落ちない屋外体験を設計できているかの問題だ。

そして原因は、ラオスの前庭とまったく同じ――表面ではなく、地面の裏側(流末・勾配・断面構成)にある。だから、この一区画で取り出した判断は、宿泊施設の動線にも転用できると考えた。

3. 断面――どこに、何を入れるか

POROMATの介入は、見た目を作ることではない。地面を「拘束・分離・排水」の3機能で組み直すことだ。

以下は現時点での初期仮説仕様であり、最終仕様は、現地の土質・高低差・流末条件・施工可能性を確認したうえで確定する。

この動線に対する断面の考え方:

  • 分離層:軟弱な原地盤と上の層を、ジオテキスタイル(不織布)で分ける。下からの泥の上がりを止め、過剰な水は下へ抜かす。
  • 空隙層:砕石(20–40mm粒径)で水の通り道=空隙を保持する。砂や細粒土で埋めると目詰まりするため、粒径を守る。
  • 流末への接続:越流リップ+有孔管(Φ50–75)で、集まった水を公道側の側溝へ導く。出口を作る。これが従来の表層対策と最も違う点。
  • 勾配:表面〜流末まで1–2%の勾配を確保する。水が「自分で抜けていく」状態をつくる。
  • 点検桝:目詰まりを後から確認・洗浄できるよう、点検口を残す。維持管理込みで設計する。

4. Decision Unit v1

この現場から取り出した、再利用可能な判断単位。他の敷地でも、同じ条件なら同じ判断が導けるかを、今後検証していく。

項目内容
条件雨後、表面水が24時間以上残る/敷地内に流末(水の出口)が無い
判断表層処理だけでは直らない。側溝・越流・流末への接続が必須
想定結果流末接続後、滞水時間が大幅に短縮(次号で実測予定)
維持条件点検桝で有孔管・ジオテキの目詰まりを定期確認・洗浄
Failure Log[今後、想定外の挙動・崩れ方を記録]

判断の核:滞水は「表面の問題」ではなく「出口の問題」であることが多い。表層をいじる前に、水がどこへ抜けるかを設計する。

5. これは「判断」であってまだ「証拠」ではない

ここまでは、現場を読んだ判断。数値による証拠はまだ取っていない。

次号 Field Log #002 で、実測に移る。ビエンチャンへの再訪はすぐには叶わないため、まず日本国内で、同じ構造(踏み固め×出口なし)をもつ動線を対象に:

  • Drain Time:散水後、表面水が消えるまでの時間
  • Water Depth:滞水の深さ
  • Surface Stability:表面の安定度

を、施工前 / 施工後 / 雨後 / 24時間後で記録し、Before / Afterを数字で示す。あわせて、計測時の土の含水状態(直前の降雨、土中の水分)も毎回記録する。地面の硬さや水の引き方は含水量に大きく左右されるため、同じ条件で比べるための下ごしらえ。ビエンチャンのこの動線も、再訪の機会に同じ手順で実測する。

判断が正しかったのか、外れたのか。それも含めて、公開することがPOROMATの記録の仕方。

POROMATでは、判断と証拠を分けて扱う。判断は仮説であり、証拠は現場で測定された変化である。この2つを混ぜないことをField Logのルールとした。

あなたの施設で、雨の日に価値が落ちる場所はどこですか?

雨後に、同じ場所がぬかるむ。駐車場から客室までの足元が悪い。サウナ・焚き火・水場への動線が、雨で使いにくくなる。レビューや案内対応に、足元の問題が影響している。

その場合、問題は表面ではなく、地面の裏側――流末・勾配・断面構成にあるかもしれません。

POROMATでは、宿泊施設・グランピング・ヴィラ・サウナ付き宿泊施設向けに、雨の日でも価値が落ちない屋外体験を設計するための診断・設計を行います。

入口診断

Rain-Ready Quick Scan|¥15,000
写真・図面・雨後の状況をもとに、15〜60分で課題の初期仮説を整理します。

本設計プラン

Rain-Ready Outdoor Experience Plan|¥500,000
現地または遠隔診断、断面図、層構成・流末のspec、改善優先順位、計測プロトコル、First Action Planを作成します。

※施工そのものは行わず、現地施工業者へ渡せる仕様と監修を提供します。

提供するのは施工ではなく、雨後の屋外体験価値を守るための判断・設計・計測プロトコルです。

▶ 相談する ― https://sunsukelandscape.com/

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